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世界で最も美しい公園

大雨のときにわざと水を流し込む都市公園の仕組み

Posted on October 16, 20261min read2 views

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大雨が降ると、公園の芝生が水に浸かり、普段は人が歩いている場所に川のような流れが現れる。一般的には洪水の被害を受けた光景に見えるが、世界には最初から水が入り込むことを想定して設計された都市公園がある。晴れた日には散歩やスポーツ、ピクニックを楽しむ場所として使われ、激しい雨が降ると一部の区域が雨水を受け止める空間に変わる。こうした公園は、住宅地や道路への浸水を軽減するための都市インフラでもある。シンガポール、オランダ、デンマークなどでは、公園の地形や水路を工夫することで、自然環境と洪水対策を両立させる試みが進んでいる。公園を水から守るだけでなく、あえて水の通り道にするという発想が、都市の風景を変え始めている。

公園が雨水を受け止める仕組み

都市で洪水が発生しやすい理由の一つは、地面がアスファルトやコンクリートに覆われていることだ。森林や草地では雨水の一部が土壌に浸透するが、道路や建物の多い市街地では、降った雨が短時間で排水設備へ集中する。下水道や排水路の処理能力を超える雨が降ると、水が道路や住宅地にあふれる可能性が高くなる。そこで注目されているのが、公園や広場の一部を一時的な雨水の受け皿として利用する方法だ。通常の利用を妨げない範囲で地面に高低差を設け、水が集まりやすい場所を計画的に配置する。大量の雨が降った際には、周辺から流れてきた水をこうした低い区域へ導くことで、都市の排水設備にかかる負担を分散できる。

ただし、公園全体を無条件に水没させるわけではない。多くの施設では、浸水を想定する区域と、歩行者が利用する高い区域を分けている。水路や排水管、地面の傾斜などを組み合わせ、雨の強さによって水が広がる範囲を変える仕組みだ。水を一時的に貯める施設もあれば、広い場所を通して下流へゆっくり流す施設もある。前者は貯留、後者は流下という異なる役割を持ち、実際の設計では両方を組み合わせる場合もある。重要なのは、雨水を一度に排水管へ流し込まないことだ。都市の中に水が一時的に存在できる場所を確保すれば、その分だけ周辺地域の浸水リスクを軽減できる可能性がある。

シンガポールの公園を流れる自然の川

代表的な事例が、シンガポールのBishan-Ang Mo Kio Parkだ。約62ヘクタールの広さを持つこの公園には、全長約3キロメートルの自然に近い河川景観が広がっている。かつて園内を流れるカラン川は、直線的なコンクリート水路に収められていた。しかし、国の水資源機関PUBと公園管理機関NParksが協力し、水路を緩やかに蛇行する川へと改修した。2012年に完成したこの事業では、川の両側に傾斜の緩い芝生の河岸が設けられ、晴れた日には人々が水辺でくつろげる空間になっている。以前はコンクリートによって分断されていた川と公園が、一つの自然景観として結びついたのである。

この川が特別なのは、激しい雨の際に姿を大きく変えることだ。通常は中央の比較的狭い流路を水が流れているが、雨量が増えると水位が上昇し、川沿いの低い芝生まで水が広がる。隣接する公園区域が一時的な流路となり、増えた雨水を下流へ運ぶ仕組みだ。PUBによると、川岸の安定化には植物、石材、土木技術を組み合わせたバイオエンジニアリングが用いられ、施工前には約11か月にわたる試験が行われた。自然に見える河岸も、実際には流水による土壌の侵食を抑えるために設計されている。さらに、公園ではトンボや水鳥などの生息環境も改善され、洪水対策と生物多様性の回復が同時に進められた。

ロッテルダムの広場が巨大な貯水池に変わる

オランダのロッテルダムには、さらに視覚的にわかりやすい事例がある。2013年に完成したBenthempleinは、普段はスポーツや休憩に使われる公共広場だが、大雨の際には巨大な雨水貯留施設として機能する。「ウォータースクエア」と呼ばれるこの施設には、深さの異なる3つのくぼ地が設けられ、合計約170万リットルの雨水を貯めることができる。雨が降っていない日は、浅い部分をスケートボードなどに利用でき、中央の深い区域ではバスケットボールやバレーボールなどの活動が行える。つまり、スポーツ広場としての機能と、洪水を防ぐための貯水施設としての機能が、同じ場所に重ねられている。

大雨が降ると、周辺の道路や建物の屋根に落ちた雨水が、溝や配管を通って広場へ流れ込む。最初は浅い2つの区域に水が集まり、雨が長く続くと中央の深い区域にも水が入る。設計を担当したDe Urbanistenは、水が流れる場所をステンレス製の溝で示し、浸水する区域の床を青色にすることで、施設の機能を視覚的にも表現した。集められた水は雨がやんだ後、地中への浸透や周辺の水路への排出によって処理される。深い区域の水は、公衆衛生上の理由から最大36時間程度で排出する設計になっている。Benthempleinは厳密には緑地公園ではなく都市広場だが、日常の公共空間を雨水対策に兼用するという点で、洪水対応型公園と共通した考え方を持っている。

コペンハーゲンで再生した歴史ある公園

デンマークの首都コペンハーゲンでは、歴史あるEnghaveparkenが気候変動への対応を目的として改修された。この公園は1928年に整備され、長く市民の憩いの場として親しまれてきた。しかし、都市部で激しい雨による浸水被害が問題になる中、周辺地域を守るための新しい役割が与えられた。2019年に一般利用が再開された改修後の公園には、地下の貯留施設や地面を低くした区域、周囲の水をせき止める構造が組み込まれている。デンマークの気候適応情報サイトによると、施設全体で約22,600立方メートルの雨水を一時的に貯める能力がある。これは約2,260万リットルに相当する。

Enghaveparkenでは、大雨の際に周辺から流れ込む水を公園の内部に受け止め、住宅地への流出を抑えることが想定されている。一方、通常の雨で集まる水の一部は、園内の噴水や植物の管理などに再利用できる仕組みになっている。改修では歴史的な庭園の特徴を残すことも重視され、既存の樹木や公園の構成に配慮しながら工事が進められた。園内には遊び場や屋外のローラースケート場も整備され、日常的な利用環境も改善されている。ただし、こうした公園が都市全体の洪水を単独で防げるわけではない。Enghaveparkenも周辺の排水設備や他の対策施設と連携して機能するものであり、雨量が設計上の想定を超えれば浸水リスクは残る。

水位が急に上がる公園で人の安全を守る方法

洪水対策として公園を利用する場合、最も重要な課題の一つが訪問者の安全だ。晴れた日には穏やかな川が流れていても、上流で激しい雨が降れば短時間で水位が上昇する可能性がある。Bishan-Ang Mo Kio Parkでは、河川の水位が大雨時に最大約3メートル上昇することがあり、危険を知らせるための監視システムが設けられている。園内の11か所には警告装置が設置され、水位の上昇などを検知すると警告灯やサイレン、音声案内で訪問者に避難を促す。河岸には赤い水位標識もあり、警報が出た際にはその標識より高い場所へ移動するよう案内されている。

洪水対応型公園では、水が引いた後の管理も欠かせない。雨水には土砂やごみ、道路から流れ込んだ汚れなどが含まれる場合があり、浸水した区域をすぐに通常利用できるとは限らない。Enghaveparkenでは、貯まった水を排出した後、公園を清掃してから一般利用を再開する手順が設けられている。また、長時間水が残る場所では衛生状態への配慮も必要になる。これらの施設は、雨の日に水遊びをするために作られたものではない。水が増えているときは、近づいて観察するよりも、管理者の指示に従って安全な場所へ移動することが大切だ。公園を洪水対策に利用するには、建築設計だけでなく、警報設備や清掃、日常的な点検を含めた運営体制が必要になる。

自然と防災を組み合わせた公園の可能性

都市公園を雨水対策に活用する方法には、環境面でも利点がある。芝生や植物を使った河岸では、水辺に生息する昆虫や鳥類のための環境を作りやすくなる。植生は土壌の流出を抑える働きを持ち、地面に水が浸透する区域では地下水の補給にもつながる場合がある。また、雨水を地下の大型タンクだけで管理するのではなく、公園の地形を利用して扱うことで、防災施設を日常生活の中に自然に取り込める。しかし、すべての公園が同じ方法に適しているわけではない。土地の高低差、土壌の性質、周辺の建物、雨水の流入経路などによって、必要な設計は大きく異なる。

こうした公園を訪れる際には、見た目の美しさだけでなく、地形にも注目してみると面白い。緩やかに低くなった芝生、通常より深い広場、周囲を囲む小さな堤、雨水を導く溝など、一見すると単なるデザインに見える部分が、防災のために計画されていることがある。シンガポールでは川沿いの芝生が水路になり、ロッテルダムではスポーツ広場が貯水池へ変わり、コペンハーゲンでは歴史ある公園が周辺住宅地を守る役割を担っている。いずれも、晴れた日と大雨の日で同じ空間に異なる仕事をさせる発想から生まれたものだ。自然を都市から遠ざけるのではなく、水が流れたり一時的に広がったりする場所をあらかじめ確保する。洪水に備える都市公園は、これからの街づくりにおいて、景観と安全を両立させる重要な存在になっていくだろう。

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